サマー・オブ・ラヴ!
8月から12月まで5ヶ月連続で犬神サーカス団がCDをリリースしましたので今回はその紹介をしたいと思います。
犬っ子だから。
まずは第1弾『光と影のトッカータ』
1曲目「光と影のトッカータ」
犬神サーカス団を知っている人なら「トッカータ」などとちょっとお洒落な単語がタイトルに入っていても、幸せな内容の歌詞ではないことくらい察しがつくと思いますが、まさか歌詞の1行目で出来たばかりの恋人が2行目で死んでしまうとは!一体この後の展開はどうなってしまうのだろうと思っていると、話は1人称の物語を越え、ついには光と影のモチーフを形而上ではなく科学的な切り口で展開していくという、明さんのクレバーな一面が垣間見える作品です。
ちなみにYOU TUBEでプロモーションビデオが見られます。
2曲目「腐乱のあなた」
3拍子の犬神らしい曲です。美しくも悲しいメロディーに残酷とも思える歌詞は犬神の王道と言えるのではないでしょうか。純粋に突き詰めた愛情は狂気の如く、という感じです。例えば「骨まで愛して」というような言葉はメタファーとしては非常にロマンチックだけど、それを文字通り受け取ってしまったら常軌を逸してしまいます。しかしそれを方法論として意図的に作品世界に取り入れていくのが明さんの作詞法の一つになっているのではないでしょうか。また、犬神の3拍子や6拍子の曲は初期の頃から「青蛾の群」「廃墟の街」など名曲揃いですが、これも例に漏れず名バラードです。
3曲目「鬼畜」
これは『蛇神姫』に収録されていた曲の再録です。現在『蛇神姫』が入手困難になっているので持ってない人にとっては嬉しい心配りです。若干テンポが速くなっているのと、アウトロがフェイドアウトではなく、ライヴ時のように変更されている以外はほとんどアレンジも変えてないようです。ノリのいいロックです。歌詞は相当凄いけど。
備考
今回の一連のCDジャケットはSUMMER OF LOVEの頃(1967年)に活躍していたアーティスト達のアルバムジャケットのパロディになっているようです。これはDOORSだと思われます。ちなみに帯の推薦文?はオーケン(大槻ケンヂ)が書いています。
続いて第2弾『地獄に堕ちた子供たち』
1曲目「地獄に堕ちた子供たち」
地獄に堕ちた子供たちが、決して終わることのない地獄の責め苦を受け続ける阿鼻叫喚の世界を描いた曲です。どんなに辛くても死んで終わりにすることのできない地獄の苦しみ。ミラン・クンデラは『不滅』という小説の中で不滅についてニーチェの永劫回帰などをモチーフにして書きましたが、「繰り返す」ということに対する恐怖は洋の東西を問わずにあるのでしょう。まあ、『不滅』は恐怖を描いた作品とは言えないかもしれませんが。
2曲目「一ツ目小僧」
曲調は人間椅子のようです。鈴木研一さんが歌ったらよく合いそうな感じです。しかし、凶子さんのドスの効いた歌声が乗ると不思議とやはり犬神の楽曲になる辺りがボーカルの存在感の成せる業なのかもしれません。ギターソロでは色々な事をやっていて聴いていて楽しいです。
3曲目「苦界浄土」
水俣病を題材にした「苦海浄土」(石牟礼道子著)にインスパイアされた曲らしいです。オリジナルは『蛇神姫』に収録されています。もともとレゲエ調のリズムだったものですが、かなりアレンジされています。オリジナルバージョンが好きだったので慣れるまで違和感がありましたが、聴き込むとこれはこれでありかな、と。ギターソロとかもかっこいいし。
備考
裏ジャケットは必見。帯の推薦文?は人間椅子の鈴木研一さんです。ジャケットは説明するまでもなく、ビートルズの『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』。The Mothers of Inventionも入っているようです。
続いて第3弾『たからもの』
1曲目「たからもの」
一般人から見たらどうでもいいと思われるかもしれないようなものを集めてしまう、所謂オタクと呼ばれる人を主人公にした歌詞です。蒐集癖のある人の行動を肯定するわけでもなく否定するわけでもなく、オタクの視点で淡々と語られているように感じます。
疾走感のある気持ちいい楽曲です。歯切れのいいギターのカッティングとベースのリフが非常にかっこいい。凶子さんの唄も心地よく胸に響きます。今回のシリーズの中で1、2を争う好きな曲です。
2曲目「裸のマリー」
これは凶子さんによる作詞で、女優を夢見るストリッパーの歌です。あまり頭は良くなさそうですが、頭が悪いなりに悟りを開いているよう。この世を悲観するのでもなく、「世の中なんてこんなもん」と見切りをつけて夢見ることで何とか生きている感じの主人公です。曲はGS調のミディアムテンポのロックです。
3曲目「気ままな旅を」
これは以前ファンクラブのイベントで配布したCD-Rに入っていた曲の再録みたいです。僕は持ってないので違いはわかりません。ジンさんがメインボーカルのパンキッシュな曲です。
4曲目「竹田の子守唄」
赤い鳥がカヴァーして有名になった京都民謡です。と言っても赤い鳥バージョンは聴いたことがないです。被差別部落の歌であるがために放送禁止楽曲となっているみたいですが、非常に美しい旋律で大好きな曲です。フォークのトリビュートアルバム『フォーエバー・ヤング〜トリビュート・トゥ・グレート・フォーク・ソングス〜』に収録したものとは別に再録したものになっています。
備考
帯のコメントは陰陽座の瞬火さんが書いています。アルバムジャケットはジャニス・ジョップリンのチープ・スリルが元ネタのようです。絵はおそらく明さん作かと。
続いて第4弾『バビロニア恋物語』
1曲目「バビロニア恋物語」
中近東風音階。ディスコビート。スライドギター。スラップベース。ディスコビートは過去に何度かありましたが、新しい犬神満載の曲です。サビ前のギターとベース、ギターソロの入りのボーカルとギター、アウトロのギターとベースなど、各所でのユニゾンも聴きどころかと思います。歌詞はバビロニア王国が舞台になっているようです。また、ドラムにはゲートリバーブがかかっているそうです。
2曲目「ディストピア」
情次2号さんの作詞作曲。個人的にこういう曲大好きです。今回のシリーズで「たからもの」と1、2を争う好きな曲。重いリフもいいし、メロディーラインも心地いい。犬神のメインコンポーザーは勿論明さんだと思いますが、「平成デモクラシー」「影ひとつ」など情次2号さんもいい曲を書いていると思います。
3曲目「少女地獄」
犬神の最初の音源『御霊前』に収録されていた曲の再録です。その後も何度かモチーフになっている近親相姦もので、これは父親と娘バージョン。娘の視点で描かれたこの曲は、サビ以外の部分が独白形式になっていて、役者としての凶子さんの上手さも堪能できます。「父親憎悪」でもメロディーに語りを乗せる手法がありましたが、筋少好きとしてはやはり「語り」は必聴です。また、「少女地獄」と聞くと夢野久作を思い出しますが何か関係があるのでしょうか。明さんも夢野久作好きそうだし。
備考
ジャケットはクリームのパロディーになっているようです。
続いて第5弾『いつか』
1曲目「いつか」
シリーズラストのタイトル曲ということでバラードです。美しい旋律の曲です。内容も普通に男女の別れを描いた作品で犬神らしくない気もします。こうなると凶子さんが歌っているので主人公が女性であるように思いますが、「実は主人公が男なのではないか?」などと疑いたくもなります。深読みしすぎ?それとも明さんが「サマー・オブ・ラヴというムーブメント」に対するノスタルジックな気持ちを「あなた」と擬人化しているのではないか?とか色々解釈できるようになっています。それも深読みしすぎ?
2曲目「運命」
曲調はがらりと変わって今度はハードロック調の曲。かなり派手な女性が男を振り回し「いい思い」をしていたはずが、いつの間にか気まぐれな運命によって「惨めな生活」に転落してしまうという内容の歌詞です。ギターソロではパッヘルベルのカノンをアレンジした部分が出てきます。カノンと言えば戸川純さんの「パンク蛹化の女」でも出てくるなどロックの世界ではよく引用されている気がします。カノンに限らずロックミュージシャンはバロック音楽が好きなのでしょうか。バッハとか。
3曲目「餓鬼」
犬っ子の間では「電車の唄」として知られている曲です。アヴァンギャルドな演奏に詩の朗読という初期の犬神を象徴する曲だと思います。歌詞は、発狂した電車の運転手が起こした電車事故のオドロオドロシイ情景を乗り合わせていた主人公の目線で語っていくというもので、一度聴いたら忘れられないインパクトがある曲です。
備考
今回のジャケットはジェファーソン・エアプレインの「シュールリアリスティック・ピロー」が元ネタらしいです。僕はこのアーティスト知りませんでした。
そしてどうやら全CDの帯についている応募券を集めて送ると素敵なグッズがもれなくもらえるらしいです。詳しくは犬神サーカス団のHPを見てください。







こんばんは。イカ天世代の僕にとって、人間椅子は懐かしいバンドです。洋楽しか聴かない僕でも、人間椅子とJitterin'Jinnは、ロックを日本語で演るという事において、良い影響を受けました。あとマルコシアスバンプ(?)っていうT・REXにそっくりなバンドもいたような・・・。
投稿: AZY | 2007年12月29日 (土) 17時33分
>AZYさん
マルコシアスバンプ知ってます。グラムロックでしたよね。ベースの佐藤研二さんはオーケンと「電車」というバンドも組んでます。今は活動してないと思いますが。ちなみに明日一夜限りでイカ天復活するみたいですね。懐かしい映像が見られるみたいです。
投稿: 施設長 | 2007年12月29日 (土) 21時06分